「あの子、ずっとしゃべってたんですよね」
いま終わった会議でのことらしい。
「ほんとにずっとしゃべってて。わたしのプレゼン、全然聞いてなくって」
「ていうか、そもそもこっち見てないし」
ちょうど視界にはいる席に座っていたらしく、席の移動を命じたほどらしい。
だいぶ頭にきているようだ。
「さっきの会議でのことなんですが」
『あの子』を呼び出し事実確認。
「ずっと私語をしていたとの報告があがっていますが」
「いいえ、ときどきです。私語ではなく仕事の話です」
特に答えづらそうというわけでもなさそうだ。
「たとえ仕事の話であっても、『ずっと』話しているような印象を与えてしまったことについてはどう考えますか。あなたにとっての『ときどき』はあいてにとって『ずっと』と感じられてしまった。それは嫌だった、あるいは気になったから『ずっと』と感じたのではないでしょうか」
やや宙を見つめたあと、「あー、たしかにそうですね。それは理解できます」
理解できるんだ…よかった。
「今後どうすればいいと考えますか」
「気になったことは会議の後で話をするようにします」
「わたしもそれがいいと思います」
話せばわかる子でよかった。今日はうまくいったほうだ。
時間の感じ方は人それぞれ。
「ずっと」と「ときどき」、意味は違えど今日は同じ時間だったようだ。
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